ナラ枯れにやられた森を再生する作業

私は今、天王森泉公園の
くわくわ森を保全する作業を
手伝っています。

くわくわ森では、
全国的に蔓延したナラ枯れの影響で
約150本もの木を伐採しました。

なので、今は木が少なく
お日様の光がたくさん入る
森になっています。

そういう明るい森がいい!
という方もいらっしゃるかも
しれませんが・・・

今のくわくわ森が豊かな森かと言えば、
そうではないかもしれません。

現に、森で見られる鳥たちは
減っているそうです。

鳥を撮ろうとくわくわ森に訪れた
お客様から聞こえる声は、
「鳥がいない」

木の成長は草のようにはいきません。

何十年という月日がかかります。

4月。
未来の森を描きながら
クヌギの幼木を植えました。

これまでの経緯について
記録しておきたいと思います。

 

 

ナラ枯れ以前の森の計画

昔のくわくわ森は薪炭林でした。

薪や炭の原料にする
クヌギやコナラを育てて、
20~25年ほどして程よい
太さになったら切り倒して、
薪や炭にします。

古い木は伐り倒され
新しい木が育つように、
人の手によって
森は常に循環していました。

けれども、戦後
新たな燃料が主流になりました。

石油や電気の普及によって、
薪も炭は使わなくなりました。

そして、薪炭林は
放置されるようになりました。

くわくわ森も手入れをする人材不足のため、
「自然の植生に任せよう」
ということになっていたそうです。

どんどん太くなるクヌギやコナラ。

太いクヌギやコナラの木は、
カシノナガキクイムシにとっては
絶好の住処でした。

 

カシノナガキクイムシによりナラ枯れする木々

この穴はカシノナガキクイムシが開けた穴では
ありませんが・・・イメージ映像です

そんな時に蔓延したのが、
ナラ枯れです。

ナラ枯れというのは、
カシノナガキクイムシが持っている
カビの一種ナラ菌に感染した
木の組織が死んでしまい、
道管が目詰まりを起こし
水を吸い上げられなくなったために
木が枯れてしまう現象です。

 

もう少し詳しく見てみると・・・

ナラ菌を持ったカシノナガキクイムシ
健全なナラに飛来し産卵する。

     ↓

・持ち込まれたナラ菌は、
孔道を伝わってまん延し
樹木の細胞に害を与える。
・卵からかえったカシナガの幼虫は、
孔道内で生育する。

     ↓

ナラ菌が感染した部分の細胞が死ぬと、
道管が目詰まりが起こり、
通水障害を起こす

     ↓

多くのナラは7月下旬頃から
8月中旬にかけて
葉が変色し、枯死に至る。

     ↓

孔内で成長・羽化した
カシナガの新成虫は、
主に翌年の6月から8月に脱出。

この際、ナラ菌が持ち出される。

(林野庁ホームページより)

 

カシノナガキクイムシ
被害を受ける樹種は、

ブナ科(ブナ属を除く)の多くの種で被害が確認されています。

例えば、

※穿孔を受けても樹木の防御反応により、全てが枯死に至るわけではありません。

(多摩市ホームページより)

 

カシノナガキクイムシは時々
大被害をもたらし終息していく
ということを繰り返している」
と聞いたことがあります。

今は、全国的に終息したようです。

もしかしたら、
カシノナガキクイムシの大発生は
なんらかの警告かメッセージ
だったのかもしれません。

 

くわくわ森のクヌギやコナラも
大きな被害を受け、
木々が切り倒されました。

大木だったので、
切り倒した木を運び出すために
キャタピラーが森の中に入りました。

キャタピラーが入った部分は
植物たちが踏み倒されて、
森は荒れました。

 

私が天王森泉公園の
ボランティアを始めたのは、
すでに多くの木々が切り倒され、
キャタピラーで運び出された後でした。

(ここまでの話は、
天王森泉公園の保全を担当されている
YTさんからうかがいました。)

 

生き残ったけれど、弱った木は・・・

カシノナガキクイムシによって
枯れはしなかったけれど、
弱った木もたくさんあります。

そんな木には、
オオミコブタケが繁殖しています。

はじめは「この黒いのはなんだろう?」
と話していました。

根元の方が黒くなった木は
みんな弱っている木でした。

そこで樹木医さんに
診ていただくことにしました。

そして、黒くなっているところは
オオミコブタケだと判明しました。

黒くもろいかさぶた状。はがれやすい。
樹木の材には黒い帯線が形成される。
枯死木の根株に多く発生するが、
生きた樹木を枯らすこともある。

(岡山 太陽のそばの果樹園より)

オオミコブタケは腐朽菌です。

オオミコブタケ (Ustulina vulgaris TUL.) は欧米やアジャの熱帯地方では広葉樹の根株腐れを起す腐朽菌として恐れられている。
本菌は我国でブナの根株腐れを起す菌として重要であり,更に常緑カシ類も同様に侵されることを確かめた。

(日本林学会誌より)

オオミコブタケが木を腐らせ
倒木の危険性が高まります。

この写真の木も、
傾いてしまい切り倒されました。

 

これからのくわくわ森をどんな森にするか?

約150本もの木々が切り倒され、
スカスカになった森。

これからどんな森にしていくか?

 

くわくわ森は天王森泉公園の一部です。

天王森泉公園は、
横浜市環境創造局が管轄しています。

横浜市の公園では南部公園に
属しています。

環境創造局と南部公園と
天王森泉公園のスタッフ・
ボランティアでくわくわ森を
どんな森にしていくか作成した
計画書があります。

その計画書通りに森を
保全管理していくことになっています。

2024年3月7日くわくわ森にて撮影

くわくわ森の真ん中辺りは
上の写真の右側のエリアです。

そのエリアはクヌギやコナラなどの
落葉広葉樹林にすることになっています。

新しいクヌギやコナラの幼木を植えて
育てていくことにしました。

 

保全を担当されているYGさんが、
くわくわ森の道に落ちていたドングリを
森の中に放っておいたものが
今、たくさん発芽して幼木になっています。

これから、それが
育っていくのが楽しみです。

 

それとは別に、ある程度育った
クヌギの幼木を植えることになりました。

4月11日にOさんが
クヌギの幼木を
植えてくださいました。

このままだと笹や草が育ってきた時に
クヌギの幼木が埋もれて
見えなくなってしまいますし、
他の植物の勢いに負けて
枯れてしまう恐れがあります。

そこで、クヌギの周りに
竹の棒をさしマーキングしました。

マーキングするのは私の仕事でした!

ある程度大きくなるまでは、
クヌギの周りはあまり大きな草が
生えないように草刈りします。

クヌギの幼木にお水をあげるOさん

この写真を見ても、
森のスカスカ具合がわかると思います。

職人技でサクサクと
作業を進めるOさん。

半分、森で遊んでいるような私(^_^;)

楽しく作業させていただいています。
私も戦力になっているといいのですが・・・

10年後のくわくわ森は、
鳥たちがたくさん住む
森になっているように・・・
森を育てていきたいと思います!

 

すべてに感謝☆

 

天王森泉公園のホームページはこちらです。

www.tennoumori.net